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1.問題・目的

心理学において“学習”という言葉は、「経験の結果として生じる、行動の比較的永続的な変容」を意味する。つまり、練習によってあるスキルが向上するのは経験によって比較的永続的な行動の変化が起こされたものであり、そのような過程を心理学では学習の過程とよぶ。

学習は多様な形で後の学習に影響を与える。一般に選考する学習が後の学習に影響することを「学習の転移」とよぶ。転移には、学習を促進させる影響をもつ「正の転移」と、干渉的に影響を与える「負の転移」がある。また、学習の転移の一例として、身体の一方の側の器官、たとえば右手を用いた学習を行うと、それがその後に行われるもう一方の側の器官、たとえば左手を用いた学習に作用する「両側性転移」というものがある。

今回の実習では鏡映描写の学習過程において、「両側性転移」が生じるかどうかを検討した。鏡映描写は、鏡を用いることで視覚の視野の上下が反転する、被験者にとって親しみのない状況を作り出し、反転状況で描かれたコースをなぞる課題である。まず、鏡映描写を複数回行うことによって学習が成立するのかどうかを調べた。学習が成立した場合、描写にかかる時間や、経路逸脱回数が減少すると考えられる。次に、先に鏡映描写を複数回行った手と異なる手で鏡映描写を行うことで、両側正転移が生じるのかどうかを検証した。「正の転移」が生じれば異なる手での試行についてかかった時間や経路逸脱回数は減少し、逆に「負の転移」が生じれば描写にかかる時間や経路逸脱回数は増加すると考えられる。これらの予想が実験結果よりどの程度当てはまるかによって鏡映描写における両側性転移と学習の関係性が決まる。よって仮説としては、「鏡映描写における両側性転移は完全な正の転移である」、「鏡映描写における両側性転移は不完全な正の転移である」、「鏡映描写における両側性転移は起こらない」「鏡映描写における両側性転移は負の転移である」の4段階が挙げられる。

 

2.方法

 実験参加者:大学生24人(男性16人、女性8人、平均年齢20.2歳)が実験に参加した。被験者は、利き手のみ学習条件群と非利き手学習条件群、統制群の3群にそれぞれ8人ずつ分けられた。これらの群を前から順にA群、B群、C群と名付ける。

 器具:星形図形の描写用紙、1人につき15枚、鏡映描写装置、ストップウォッチを実験に用いた。

 手続き課題は鏡に映った星形図形のコースをなぞって描写することであった。実験参加者には、描写はできるだけ速く正確に行うこと、描写開始後は鉛筆の先を図形から離さないことなどが教示された。どの群の実験参加者もまず利き手で鉛筆をもって図形描写を2試行連続で行った。その後、条件ごとに、A群では第1~15試行まで全て利き手で、B群では第1・2・13~15試行は利き手で、3~12試行は非利き手で、C群では第1・2試行を利き手で行った後、第3~12試行で一定時間の休憩を挟み、第13~15試行を利き手で行った。1試行は、閉眼状態で待機中の被験者が持つ鉛筆の先を、実験者が描写開始地点に誘導する尾頃から始まった。次に、実験者の合図と共に被験者は開眼して鏡映描写を開始した。実験者は描写完了にかかった時間と、図形のコースからの逸脱回数を計測した。

 

3.結果

              グラフ1.試行数と経過時間

 

 

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